負け犬の傷に、キス



傷つけるのが怖くなった、臆病者。


心がぽっきり折れてしまった、弱い弱い総長を、下っ端たちがあんな目で見てくるのもわかるよ。



俺だって、俺みたいな総長なんか、信じられない。




「「はあ~~~」」



2人してため息!?

俺、ウザかった!?




「わかってねぇな」


「ほんとに。キユーがそう言ってる時点でなんにもわかってない証拠だよ」


「ええ……?」




黒のソファーにふんぞり返る柏も、桜の紅茶をたしなむ薫も、やれやれと肩をすくめていた。


わかってないって何が?

意味がわからん。



「2人は何がわかってるんだよ!」



俺以上に俺のことわかってるなら言ってみろ!




「そうだなぁ。例えば……その足とか?」


「えっ!?」


「右足、さっきから引きずってるよね?」


「ば、バレてた……?」


「もちろん」




ずっと指摘されなかったからバレてないと思ってたんだけど……。


どうやら薫には最初から見透かされてたようです。




「何かあったの?」


「い、いや? 別に……ちょ、ちょっと転んじゃっただけ! あはは!」




笑って押し切ろう! そうしよう!

着地に失敗した……なんてダサくて言いづらいよ。




「そういや希勇を待ってる間、“負け犬”は超超超激弱だってうわさともう1個、おもしれーうわさ聞いたよな」


「あー、そういえばそうだったね」




いや俺のうわさも気になるけど!?

「超」何回つけてんの!?


今のところ俺、逃走は全部成功してるよ! 誰にもやっつけられたことないよ! なのになんでそんなうわさ流れるの!?