「さらに悪化する前に助け出せばこっちのもんでしょ?」
「だ、だけど、うまくいかなかったら……?」
それが怖いんだ。
失敗したら、津上さんが一番苦しむ。
「僕たちも協力しますよ。絶対うまくいかせます」
男の子と長髪男子が立ち上がった。
一度ならず二度までも助けてくれるのか?
「どうして……? 協力しても2人にメリットはないのに……」
「ありますよ」
「え?」
「彼女さんを助け出せたあかつきには、僕たちにも協力してほしいんです。いわば交換条件ですね」
年齢のわりに大人びた顔つきは、さながら有能な営業マン。
けれど必死にすがろうとする、年相応なつたなさもしばしば垣間見える。
「……なるほどね。それが狙いだったんだ」
そう淡泊に呟いて、薫は柏の手ごと自分の手をどかした。
ようやく圧迫から解放される。
痛かったぁ……。
「誘拐に手を貸さなくても、きみたちはもう俺を助けてくれたじゃないか。そこにつけ込めばよかったんじゃ……?」
「申し訳ないですが、最初はそうしようと思ったんです。でもそれだと、本来はちゃんとした交換条件にならないんです」
「俺らが頼みたいことは、あんたを助けたちっちぇー恩と等しくねぇんだ。交換条件を示すには、同等の内容のほうがいいだろ?」
「は、はあ、そうですね……??」



