「あの子からだったの?」




弱々しく携帯を耳元から離すと、薫が神妙に問いかける。


ツーツー、と無情な音が鳴る。

真っ暗な画面を見てうつむいた。




「家で軟禁されてるらしい」


「そう……」




どうしよう。どうしたらいいんだろう。


俺にできることはない?

もう一回院長のところに押しかける?



携帯をポケットに戻す気力もなく、テーブルの上に手のひらごと置く。


その手を全力で握りしめるのは、薫のきれいな手。




「痛い痛いっ!!」


「しょぼくれてる場合じゃないでしょ。キユーの傷つくところなんか見たくないんだよ。しっかりして」


「どうせ助けたいんだろ?」




さらにその上から柏の骨ばった手が乗っかった。


痛みが増す。

骨がみしみし軋みだした。




「折れる折れるっ!!」


「ならさらっちまえばいいじゃねぇか」


「ビーヤン、ナイスアイデア!」


「……へ?」




さらう?

って、誘拐!?




「いや誘拐はだめだろ。犯罪だよ!?」


「軟禁も十分だめでしょ」


「説得するより断然早ぇだろ」


「そ、そうだけど……。お尋ね者になっちゃうし、院長に嫌われて悪化しちゃったら……!」


「そんなん元からだろうが」


「今となんら変わらないよ」




そうだった。

さっきも追われてたんだった。
とっくに嫌われてたんだった。


そこにちょっと危険度がプラスされるくらい……そうだね、どうってことない。