よかった、はこっちのセリフだよ。
津上さんの無事みたいでよかった。
「この電話番号って……もしかして家の?」
『そう、携帯を取り上げられちゃって』
「え!?」
『今、家に誰もいないからかけたの。草壁くんのことが心配で』
全然……これっぽっちも無事じゃない。
だって泣いてるでしょ?
隠してたって気づくよ。
『あのね、わたし……もう草壁くんと会えないかもしれない』
「どうして……」
『お父さんに学校以外は外出するなって言われて……登下校も車にするからって。わたしを家に閉じ込める気なの……っ』
院長は徹底的に引き離そうとしてるんだ……。
どうして津上さんばかり苦しむことになっちゃうんだよ。
俺は自由なのに津上さんは軟禁?
冗談じゃない。
『ごめんね……』
「津上さんが謝る必要ないよ!」
『ううん……ごめん……』
「……津上さん……」
『せっかくくれたバラ、台無しに――
――姉ちゃんただいま。誰と電話してるの?』
津上さんじゃない人の声がうっすら届いた。
瞬間プツリ、と電話が切れる。
たぶん、このたった一本の電話さえ、本当はしてはいけないことだったんだ。
どれだけ勇気を振りしぼってくれたんだろう。



