負け犬の傷に、キス



は、派手に転んだなあ……。

長髪男子もギョッとしてるよ。




「薫、おまっ……!」




すぐさま起き上がった柏は、怒りの矛先を転換する。




「ビーヤン?」


「……っ」


「…………」


「…………チッ」




はい、薫の気迫勝ち。

真っ黒スマイルとプレッシャーに敵うものなし。


嫌々ながら牙をしまった柏を、薫が自分の元に回収した。




「こいつ、気をつけてね。ちまたでは“野犬”なんて呼ばれてるくらい凶暴だから」


「こちらも熱くなってしまうところがあって……」




薫と中学生の男の子、まるで保護者みたい。


腹の探り合いがガチのケンカにならなくてよかった。




「そういえば、おふたりはご兄弟なんですよね」


「まあ」


「お兄さんの言うことは聞くんですね。血はつながっていないのに」




おおっと!?
今度は、年下男子のターン!?


最後に爆弾を放り投げられ

俺は冷や冷やするし、柏はまた息巻くしで


休む暇がない。




「……へぇ〜? よく調べたね」




薫が無表情で棒読みは怖すぎる!!




「こ、こんなところで長話もなんだし、よければ上がってってよ!」




何か勃発してしまう前に先手必勝!

間に入ってできるだけフレンドリーに誘う。




「助けてくれたお礼もしたいから! ね!?」


「聞きたいこともあるしね」