負け犬の傷に、キス




「さっきからうっせぇな」




頭上から舌打ちが降ってきた。


見上げれば、洋館の2階の窓から柏が顔を覗かせていた。



あそこは幹部室。

ずっとひとりでいたのかな。




「あれが薫さんの……」




さん付けにしたらしい長髪男子の独白に、柏の形相が強張った。


えっ、今のが聞こえたのか!?

すごーく小さかったぞ!? 地獄耳か!?



ちゅうちょなく柏は窓枠に足を乗せた。


ま、まさか……!?



――ドンッ!



……案の定、そのまさかで。

2階から飛び降りやがった。


力強く着地すると、長髪男子に近づいていく。


長い前髪の奥の目が、完全に据わってる。




「こいつ、敵か?」




聞いたのは俺か、薫か。

……薫、だろうな。


薫が長髪男子を敵認定していてもおかしくない空気感だったし。



八重歯をぎらつかせて威嚇する柏に、長髪男子はなぜか乗り気に竹刀をかまえてる。




「どっからでもかかってこいよ」




かかってこいじゃない!

そこは全力でストップかけて!!



望み通りつっかかっていく柏が、薫を横切ろうとした直後。



「っ!?」



伸びてきた薫の長い足に引っかかり

ズサァァ!!

と顔面から地面に転倒した。