負け犬の傷に、キス



1台のバイクが接近してくる。


警察じゃないよな……!?


一応逃げる準備だけしておく。

いちについてよーい、の姿勢でバイクに目を凝らす。



大幅に改良された大型バイク。


あのバイクは……!



近くでブレーキのかかったバイクから運転手が降りた。




「たまり場前で突っ立ってどうしたの、キユー」


「薫!」




やっぱり! 薫だった!



宣言通り生け花の稽古を抜け出してきたんだろう。


制服ではなく私服に変わっていた。

和柄のシャツがイカしてる。



相棒のバイクでヘルメットもかぶらずに来ちゃって……よくバレなかったな。




「てか、そいつ誰」




来て早々、薫はジロリと学ランにガンを飛ばした。

上から下まで視線でなめ回す。




「もしかして探してたヤツ?」


「たぶん……?」


「たぶんて、見るからにそうでしょ」




「……探してた?」




首を傾げる男の子にギクリとする。


コソコソ話してたわけじゃないから聞こえて当然なんだけど……。




「あー、えっと……」


「ちょっと聞きたいことがあってね」




わかりやすくあわてる俺を、薫がフォローしてくれた。


あ、薫もわかりやすく警戒してる。
わざとわかりやすくしてるな、これは。

ガンをつけなくなっただけマシか。