負け犬の傷に、キス




「さっきの……きみの仲間なの?」




バテることなく手足を振り続ける男の子に問いかけてみる。




「はい、そうです」


「置いてっちゃってよかったの!?」


「ころあいになったら、彼が自分で収拾すると思うので大丈夫ですよ」


「そうか、彼が時間をかせいでくれ…………へ? 彼!?」




あの人、男の人だったの!?




「気づきませんでした?」


「うん、まったく……」


「彼は演技力に長けていますから」




遠目で顔が見にくかったとはいえ、あの演技力は凄まじい。


近くで見ていたとしてもだまされてただろうな。



男の子自身だけじゃなくて、お仲間も“ふつう”じゃなさそう。

どういう関係なんだろう。





「あ、見えてきましたよ」




男の子が前方を指差す。

異彩を放つ洋館があった。



「たまり場だ!」



うしろから追手は来ていない。

うまく撒けたらしい。


目的地に到着し、汗を拭う。


あー、疲れた。




「逃亡成功、ですね」


「本当にありがとう。きみとさっきのきみの仲間のおかげだよ」


「いえ、お役に立ててよかったです」




いい子だなあ。

怪しさは消えないけど悪意は感じない。



――ブオオオン!!



俺たちが来た方向から、けたたましいエンジン音が響き渡った。