「食べながら行こっか」
ご満悦な薫に賛同し、クレープ片手に人混みの中を進んでいく。
西の方角に歩いて3歩目で、柏は早くも2個目のクレープを平らげていた。
「なあ、あれって……」
「双雷の犬どもじゃねぇか」
「3匹そろってやがる」
「“負け犬”だけなら殺りに行ったのによ」
細い路地から殺気やら敵意やら飛んでくる。
さっきみたいに追いかけ回されないだけマシか。
「……殺るか?」
「ビーヤン、やめな。売られてもないケンカを買う必要なんかないよ」
「そうだよ。今はたまり場に行こ」
短気な柏を抑え、繁華街をあとにする。
目的地は、西。
街はずれにある、古びた洋館。
そこを拠点とする暴走族・双雷。
数々の伝説を残し、最強に近しいグループのひとつと謳われてる。
その双雷には、3匹の犬が君臨している。
ラズベリー色の“セレブ犬”。
金色の“野犬”。
そして――茶色く汚れた“負け犬”。



