紗良は、翌日の仕事を6時半に終えると、新宿に向かった。「PAPAPASTA」は新宿西口すぐのカジュアルなパスタ屋さんだ。少し早く着きすぎたかな。芽衣ちゃんのスマホにLINEする。

「今、PAPAPASTAの前。芽衣ちゃん、まだかかりそう?」

すぐに、返信。

「もう、席についてるよ。窓際の席。紗良ちゃんが見える」

えっ?きょろきょろさがすと、少し前の窓の中で手を振っている芽衣ちゃんが見える。

「今、行くね」

慌てて、店に入って

「待ち合わせです。窓際の、彼女」

と言って、芽衣ちゃんのもとに行く。

「早かったんだね」

「来たのは今さっきよ。本屋で時間をつぶしてたの。うちの会社、残業ないから」

「そうだったね。化学薬品メーカーだったっけ」

「うん。そう。まぁ、会社のことはいいじゃない。何にする?」

サラダとパスタとドリンクのAセット、それに小さな前菜のつくBセット、それにデザート付きのCセット、単品のパスタ、などがあった。パスタの種類も豊富。う~ん、どうしようかな。

「芽衣ちゃんはどうする?」

「きのこの和風パスタのBセットにしようかと」

「じゃあ、あたしは、小エビのトマトクリームソースパスタのBセットで」

呼び鈴を押すと、ウェイターさんがオーダーを取ってくれる。

「お飲み物は何になさいますか?」

「ウーロン茶で」と芽衣ちゃん。

「アイスミルクティーを」とあたし。

「お飲み物はいつお持ちしますか?」

「先でいいよ、ね?」

「うん」

かしこまりました、と言ってウェイターさんが下がる。

「芽衣ちゃん、どうしてた?今井くんとか、雪乃ちゃんとか、連絡とってる?」

「あのメンバー、高校はみんなおんなじ高校に行ったんだけど、見事にクラス別れて。それでも少しの間は一緒に遊んだりしてたんだけど、だんだん疎遠になってね。雪乃とは連絡とってるけど、他のみんなとは音信不通」

「そうなんだ」

「でもね、最近、あたし、SNSでもと3-Dの何人かと連絡取り合ってるんだ。で、クラス会、開かないか、って話になってる。10年経ったしね」

「それは、楽しみ!」

「紗良ちゃんも是非来て!今度、住所教えてよ。案内送るから。多分ね、8月ごろになると思う」

そのあとは、パスタを食べながら、お互いの彼の話とか、当たり障りのない話をして別れた。

クラス会か・・・。今井くんは来るんだろうか。会うのが楽しみなような、怖いような、不思議な感覚に悩まされながら、その日はなかなか寝つけなかった。