どうして教室に入ってこないのかは不思議だけど、一気に懐かしさに襲われて、私を呼びにきてくれた女の子のことも忘れて、千草、と呟いてしまった。




迎えにきてくれていたんだ。
昔は、いつも。



はやくして、なんて文句を言いながら、私の帰りの準備を手伝ってくれたりもしたし、隣りに座って二人きりの教室で課題を終わらせてから帰ったりしたこともあった。


思い出したらほんの少し泣きそうになって、あわてて前を向く。




「……あのっ、呼んでたから、早く行ったほうがいいと思うっ……」


たどたどしい口調で、私にそう言ったその子の頰はまだ赤くて。

千草に頼まれたから、その任務を必死に果たそうとしているみたいだった。



「わかった。伝えてくれてありがと」




私は少しだけ笑ってしまいながら彼女にお礼を言って、千草の元に向かった。