結局のところ、私の願いはむなしく、当たり前のように長くて憂鬱な一日が始まった。
広野みゆちゃんには一度も会わなくてすんだから、それだけはよかったけれど。
合わせる顔なんてない。
どんな顔をすればいいのか分からないし、どんな顔をされるのかも分からなくて。
申し訳ないっていう正しい気持ちだけではないのが本音だ。
だって、私と仲直りしたって、私に優しくしたって、千草が好きなのはきっと広野みゆちゃんなんだから。
千草の好きな人を見たら、苦しい。
あの日。ゆうに襲われそうになった日。
一度だけ私を優先してくれたけれど、その一回きりの出来事だけで、身の程知らずな嫉妬心はなくせないの。
広野みゆちゃんを目に映すと、いつだって私の脳裏に浮かぶのは、いつかのあの日、まだ鮮明に覚えている 千草と広野みゆちゃんのキスシーンだ。
好きが溢れてるみたいな温度も、大切そうに頰を包んだ千草も、そんな千草のことが好きなんだって気づいてしまったあの時の苦しさも、ぜんぶぜんぶ、覚えてる。
広野みゆちゃんを見るたびに、それを突きつけられて、逃げることができなくて。
記憶をひとつだけ失える魔法があるのなら、私は迷わずあの時の記憶を消すだろう。



