ねえ、理解不能【完】








「……旭くんと、また何かあった?」




勘のいい妃沙ちゃんに、私は小さく頷いて、今日一緒に学校に来たことを伝えたら、妃沙ちゃんはちょっとだけ怒ったふりをして私の頭にこつんと弱い力でげんこつを落とした。




「それは関心しないなあ。青に、旭くんに対しての恋愛感情がある時点で、一緒に学校に行くのは浮気になるって私は思うけどなあ」

「だって、千草が誘ってくれたから、だもん。私が誘ったんじゃないよ? それに、断るなんてできなかった…」



妃沙ちゃんの少し怖い顔に、ドギマギしながら言い訳を伝えるけれど、語尾は小さくなってしまって。


浮気、濁ったその響きに、ざわりと心をなでられて、嫌悪感に包まれる。

そんな私に、妃沙ちゃんは机に肘をついて内緒話するみたいに顔を近づけてきた。



「でもね、青。私は青の味方してあげる。広野さんから旭くんを奪っちゃえって私だけは思ってあげる」

「……妃沙ちゃん」

「だって、恋してる青可愛いんだもん」

「うう、妃沙ちゃん……!」



うれしくて安心して、その気持ちのまま、妃沙ちゃんに抱きつこうとしたら、甘えないで、と言ってひらりとかわされた。


本当のお姉ちゃんみたい。

でも、妃沙ちゃんみたいな強い味方がいようとも、私の恋は上手くいかない気がするよ。