「放課後もちゃんと待ってて」
学校に到着して、廊下で別れる直前、千草はそう言って足を止めた。
朝だけじゃなくて、帰りも一緒に帰るつもりなんだ。
一緒に帰ろう、じゃなくて、待ってて、という。なんだか千草らしくて、でもそんなことわざわざ口に出す千草は、全然らしくない。
私から言ったんじゃなくて、千草が言ってきたんだから。なんて、だれに対してかはっきりしない言い訳を心の中でしながら、こくりと頷く。
「じゃあね、千草、放課後」
「ん」
勇気を出して、ばいばいって控えめに手を振ったら、千草も微妙にだけど振り返してくれた。
くるりと背を向けた千草。その後ろ姿が振り向かないことをいいことにじっと見つめる。
未だに直っていない寝癖。背中が遠ざかっていく。
でも、さっきまで隣に並んでいてくれた。
仲直りする前、千草と学校に行った日、広野みゆちゃんに誤解されないように、って途中で私と一緒に行くのをやめたのに、今日は違っていて。
誤解されてもいいのかな。
どうしてなんだろう。
すごく気になるけれど、絶対に千草には聞かない。
なんて答えるのか怖いし、聞くことで隣にいられなくなってしまうことだけは嫌だから。



