ねえ、理解不能【完】







ーー好きだなあ。



だけど、この恋はたぶん、消滅するのを待つだけなんだろう。

この気持ちがなくなって、千草に触れても触れられても、心がなにひとつ動かない自分になるのを、ぐっとこらえて、待つだけ。


だって、千草には、広野みゆちゃんがいるんだから。



千草の髪に触れたドキドキとか、髪型を褒められた喜びとか、そういう幸せの種を摘むかのように巡った考えは、瞬時に私を切なくさせる。


そのまま千草から目をそらそうとしたら、千草は、青、と私の名前を呼んだ。




「その顔、だめ」

「え?」

「切ない顔、だめ」

「……ごめ、ん」




だれのせい、なんて反抗的な言葉がぱっと浮かんだけれど、口からすべり落ちることはなかった。

千草が静かに怒ったような声音で、だめ、って言うから反射的に謝ってしまう。


そうしたら千草は首を横にふって、また眉間にしわをつくった。