結局いいんだ、なんてこっそり心の中でツッコミをいれていたのも束の間のこと。
千草は伏し目がちに私を見下ろしたかと思ったら、私の方に手を伸ばして、それから、ぎゅっと手首をつかんだ。
「は、」
突然のことで間抜けな声が口からもれる。
千草は私の手を自分の頭の方に誘導して、かがむようにわずかに背を曲げて、私のほうに顔を近づける。
「…青が直して」
「え、と」
「いや?」
嫌、ではない。
だけど、恥ずかしくて、頰に熱の存在を感じて、昔みたいに気軽に触れるなんてもうできないことが分かっていたから、困る。
それでもつり目がちな千草の瞳に捕まったままでは、抵抗することなんてできなくて。
私は小さく首を横に振って、千草の髪に触れる。
さらさらなのに少しだけかたまってる。たぶん、ワックスを使ってるんだと思う。
寝癖の部分を手で押さえて、跳ねないようにしてみるけれど、なかなか上手くはいかず。
千草がじっと視線を送ってくるから、平常心が保てなくなる。



