「……どうして?」
俯いたまま出した声は、ひとつも可愛げもなく、責めてるみたいになってしまった。
何に対して尋ねているのか、自分自身もわからない。
だけど、泣きわめく代わりに、千草のことを責める気持ちは大きくなってしまう。
「どうしても」
「……か、勝手だよ!」
「分かってる。…だからもっと怒って」
拒んだはずの千草の手は私の抵抗を無視して強引に引き寄せる。
それでも渾身の力でそれを拒んだら、千草は引き寄せるのをやめて、私の頭に手のひらをおいて弱くなでた。
もう、だめ、だ。
限界だった。
「……ぅぅうっ、……っ」
強く噛んだ唇の隙間から、嗚咽がもれる。
拒んだのに、触れている、千草が。それ以外、今ここには何もない。
頭に触れる千草の手のひら。
なで方は丁寧だけど、慰めるのとは違う風で、苦しくて、どうしてか腹が立って、それでいてどうしても満たされていく。



