体にうまく力が入らない。 後ずさりしたいのに。 背を向けたいのに。 この場から今すぐ逃げ出したいのに、目も心もぜんぶ、千草に捕まったままだ。 千草の瞳は、まっすぐに私を映している。離れているのに、それがわかる。 きっと、見せつけてるんだ。 私を、傷つけようとしている。 あの瞳は、故意だ。 だけど、なんで私は傷ついているんだろう。 分からない。 ううん、 もう、分からないふりなんて、できない。