「食べないの?青」
フォークの向こうで、首を傾げているゆう。
食べる。食べるけど。
......食べさせてもらうのは、恥ずかしい。
でも、そんなこと言ったら、もっと恥ずかしい気持ちになることが目に見えていて。
こういうのって、普通なのかな。
付き合っていたら当たり前?人前でするもの?
付き合ったことがないから分からない。
分からないけど、ゆうの笑顔を見ていたら、自分で食べるよ、なんて言えなくて。
「.....た、食べる」
私は、顔の前に落ちてくる横髪を耳にかけて、覚悟を決める。
目をつむって、パクリと差し出されたフォークを口に含めば、その瞬間に、口の中にカルボナーラのクリームがとろける。
フォークから口を離して、ゆっくりと味わう。
ドキドキ、心臓が跳ねる音は誰にも聞こえていないでほしい。頰に集まる熱も、はやくさめて。慣れてないって厄介だ。
「お、美味しい!ありがと」
なるべく動揺しないように、笑ってお礼を言おうと思ったのに、噛んでしまって、さらに照れてしまう。
人前で、こんなこと、やっぱり恥ずかしいよ。普通でも、私にとっては普通じゃない。
横髪で頬を隠すようにして、落ち着きを取り戻そうとする。



