「..........」
「........っ、」
しばらく沈黙に包まれるテーブル。
私は誰とも目線を合わせることができずに、テーブルの上に置かれたコップを見つめる。
このまま、お料理がくるまで誰も話さない気なのかな。それは、さすがに厳しい。
いま、沈黙になってしまった原因なんて、一つしかない。私のせい。いや、違う千草のせい。
だけど、よく考えたら頼むものがかぶるなんて別になんともないはずなのに。ゆうと広野みゆちゃんが同じものを頼んでもわたしは何も思わないよ。食べたいものを選んだだけだ。それなのに、なんでこんな雰囲気になっちゃうのかな。
「.....ミネストローネ、みゆも好き」
「そ、そーなんだ!美味しいよね」
「青ちゃん。今のは、ちぃくんに言ったんだよ」
広野みゆちゃんの発言に思わず視線を向けたら、天使みたいな微笑みを顔に浮かべていて、思わずゾッとした。この顔でそんなこと言うの? さっきよりも気分が悪くなりそうだ。
......全部、千草のせい。
自分の彼女の機嫌くらいとってほしい。同じものを頼んでこうなるなら、考えてほしい。気分悪くても、パスタとかグラタンとか頑張って頼んで欲しかったよ、ばか。
でも睨みたい気持ちをおさえて、意地でも千草の方は見ない。今見たっていいことないって分かってる。
ダブルデート、組み合わせは私とゆう 広野みゆちゃんと千草 なはずなのに、ところどころで違う組み合わせでかぶってしまう好きなもの。そのたびに、焦って、ムカついて、それで、心の中でほんの少しの嬉しさが芽生えてしまう自分も、気分悪い。



