ねえ、理解不能【完】






だけど、決めてない、っていうわけではなかったようだ。

言うのを躊躇っている感じ。「ちぃくん?」って広野みゆちゃんが、名前を呼ぶ。

そうしたら千草は、一度私とゆうのほうに視線をすべらせたかと思うと、そのまま店員さんの方を見上げた。








「ミネストローネ」





千草の声が、やけにクリアに聞こえて。

広野みゆちゃんがその瞬間、なぜか私の方を見る。天使みたいな顔が真顔をつくったから、私はどうすればいいか分からなくなる。



どっどっどっ、って心臓がうるさくなってる意味もわからないし。視線を泳がせて、ついには俯くことしかできなかった。




「以上でよろしかったですか?」



店員のお兄さんの柔らかい声が、今は救い。何にも事情を知らない人ってありがたい。


「あ、はいっ」


広野みゆちゃんがワンテンポ遅れて、店員さんに返事をする。

店員さんは注文の確認をして、素早く厨房に戻っていった。