まあ、それは当たり前といえば当たり前だ。まだダブルデートがはじまってから、数時間しかたってない。
「ちぃくん、何食べたい?」
広野みゆちゃんが隣の千草に上目で聞く。
気分が悪そうな千草の顔。ざまあみろ、って思ったら、清々した。きっと、千草も人酔いしてるんだろう。結局インドアは、デパートなんて向いてない。
というか、広野みゆちゃん、千草の気分が悪いこと、分からないのかな。彼女のくせに。
.......別にどうでもいいけれど。
「何でも。でも、人が少ないとこがいい」
気だるげな千草の声。私だったら、帰ろうって言ってあげる。でも、広野みゆちゃんは言わないね。
「何でもって一番難しいんだよ?」
千草を見つめて困った顔をして唇をとがらせた広野みゆちゃんに、ごめん、って謝る千草。
今、四人でいるはずなのに、まるで二人だけでいるみたいな雰囲気。甘ったるくて、馬鹿みたい。
本当に帰りたくなってきた。



