ゆうは、ハムスターが好きらしい。
昔、飼ってたよ、と教えてくれた。
ゲージの中でちょこまかと動き回るハムスターを目で追う。ゆうの顔がすぐ横にあって、少し動くと頰と頰がくっつきそうで、気が気じゃない。今はちゃんとドキドキが優勢だ。
「こいつらね、脱走しようとすんの。かわいがっても、結局逃げたがる」
「そ、なんだ。なんでなのかなあ」
「本当は、別に可愛がられることを求めてないのかも」
ガラス製のゲージに人差し指をあてたゆう。カツン、と小気味よい音がする。
そんなことないと思う、とは言わなかった。
本当に、そうなのかも、って思っちゃったから。



