ねえ、理解不能【完】





「....ちぃくんってお魚好きなの?」

「別に、そんなに」




そ、れは、嘘でしょ、流石に。

思わず、固まってしまう。



そんなにって言う人間は、あんなに飼育に金かけないし、一目見ただけで共食いするかどうかなんて判断できないよ。

自分が大切に育ててる熱帯魚が聞いて悲しむセリフだよ、今のは。



千草、好きなもの、全然広野みゆちゃんに言わないんだね。

昔から、口に出して言うタイプではなかったけれど。千草って、好きを隠すひとだったんだ。




「ねえ、青」

「.........,.、」

「青ー」

「...........」

「青!」




いきなり覗き込まれて、目の前に広がったゆうの顔に、びくり、と身体が跳ねる。


「魚に夢中になりすぎ、青」

「あ、えっと、うん、ごめん。ついつい」


本当は、千草と広野みゆちゃんの会話に気を取られていたんだけど、ばれてなくてほっとする。


「俺、ハムスター見たいんだけど、いい?」

「あ、うん。いいよ、見に行こう」



水槽が並ぶ場所をぬけて、ハムスターのところに行く。

千草たちと離れられて、力が抜けた。