ねえ、理解不能【完】





駅に着くと、ゆうが改札口のところで柱によりかかって立っていた。早くでたはずなのに、それよりも早く着いていたゆうに、すごいなあ、なんて感心しながら近づく。


ブランドもののきつねのマークがついたシンプルなTシャツに、黒色のズボン。だけど肩掛けのカバンは、落ち着いた色のチェックでおしゃれ。


私服までもが爽やかだ。モテるだろうなあ、この人。改めて、思う。




「おはよう、ゆう」

「あ、青だ。おはよう」



ゆうは顔をこっちに向けて、ふわりと笑う。それから柱によりかかるのをやめて、私のところに歩いてくる。



土曜日ということもあって、駅は結構な混み具合。

待ち合わせまではまだ時間はあるから、千草と広野みゆちゃんは来ていない。


私の前に立ったゆうは、私の髪に手を伸ばして、さらりと撫でる。

なんと。朝から爽やか代表はやることが違う。



「青ってそういう格好するんだ」

「う、オシャレじゃないことは重々承知です」

「なんで。可愛い」



カワイイ。って言われた。
ゆうは、少しだけ恥ずかしそうに目を伏せて、いいな、ってひとりごとみたいに呟く。


女の子っぽいふわふわした服装じゃないのに、褒めてくれた。可愛いなんて言われなれてないから、どういう顔をすればいいのか分からないけれど、素直に嬉しい。


「.......ありがとう。ゆうも、か、かっこいい!」



言われるのも照れるけど、言うのはもっと恥ずかしいんだね。朝から頰に集まる熱に、あせる。

ゆうは、ありがとう、って笑いながら、自分の前髪をさわってた。