私達もここから出て散策に戻ろう。と1歩踏み出したところで、後ろから突然抱きしめられた。


「うきゃあっ!!?」

「っ! 結果的に何とかなったからいいものの! 君は危なっかしすぎる! いつの間にあんなに離れていたんだ。あと少しで今度こそすべての記憶を食われるところだったんだぞ!」

「ごごごごめんなさいっ」


 はー……と長い長い溜息の後、今度は落ち着いた声で三栖斗が言う。


「すぐに気が付かず、すまなかった」

「う、ううん」


 もう大丈夫だから、と私を抱きしめる腕をポンポンとなだめるように叩く。するりとすぐに解放された。


「君がたまに見せる、バケモノ寄りになった時の瞳の輝きがな、銀色だったんだよ。自分ではおそらく見た事がないだろうが」

「えっ? そう、だったんだ。道理で……」


 私は自分の目元を薬指でそっと撫でる。
 同じ色だからって血縁者とは限らないだろうけど、状況的に祖父だと勘づいたんだなあ。

 その時、くう……と私のお腹から空腹を主張する音が鳴った。


「あっ!?」

「…………ははは! そうだな、修学旅行に戻るか」

「……戻る」


 2人で人通りの多い道に戻る。辺りは陽が落ちて、少しだけ暗くなっていた。







 翌日、朝からお寺や神社を巡ってお昼過ぎに京都を出てまた新幹線とバスを乗り継ぎ、私達は学校へと帰って来た。あっという間の3日間だった。

 学校の駐車場には迎えに来た保護者の車が並び、バスを降りた私達は先生の挨拶を聞いてから解散した。

 銀河と三栖斗は、先生の目を盗んでこっそりと部活棟の方へ隠れながら消えていった。銀河は両手いっぱいのお土産を。三栖斗はなんだかんだ少しだけ自分用の買い物をしていた。

 私もそれなりの荷物があり、父が迎えに来ていたので車をみつけるなり後部座席に荷物を載せて自分は助手席に座った。


「なんだその荷物は」

「着替えと普通にお土産と……あとはリクエストされてた焼き菓子ですう~」

「それは失礼」


 父が笑って車を発進させる。

 その横顔をついぼんやりと眺め、そうだ祖父の目元とそっくりなんだと思った。