最近、私は自分が情けないようなそんな気分になる事が……たまに、そうたまにある。

 恋に落ちると周りが見えなくなるなんて、まあ良く聞く言葉だけどこのままではいけないとは自分でも思ってる。

 でもお風呂に浸かっていて、お湯の温度がちょうど良くてついつい長風呂しちゃう事ってあるでしょ? 早く出なくちゃってわかっているのに、気づいたら指先がふやけてシワシワ……なんて。


「それは……つまり」


 ゴオオ……と頭上をジェットコースターが通り過ぎる。通り過ぎた後に強い風が吹いて、並んでいる私たちの髪を激しく乱した。


「私は風呂だと」

「あー……水でできてるって部分では合ってるんじゃん?」


 隣で首を傾げる三栖斗に、銀河が謎のフォローを入れる。私の後ろで怜音と晴香がケラケラと笑った。


 修学旅行1日目。私たちは新幹線とバスを乗り継いでまず三重県へ。そこでまず体験学習を終えた後に遊園地に来ていた。怜音に三栖斗と付き合っている事を話したら、「なーんだ、くっついたなら後押ししまくってあげる事もないか」と1日目の遊園地での自由行動を5人でする事になったのだった。

 ジェットコースターに並んでいる間、晴香が私に三栖斗との事を訊いてくるので「しっかりしていないと周りが見えなくなりそうで怖い」というような話をしていたところ、「もう割と2人の世界っていうかラブラブオーラがだだもれてるよね!?」と怜音がツボに入ったように爆笑しつつも冷静に突っ込んだところからなぜかお風呂の例えになってしまった。


「銀河くん、水でできてるって?」

「あ、いやホラ。人間の半分以上は水分じゃん?」


 そういう意味では言ってなかっただろうけど、なんとか銀河は誤魔化した。

 列が動き出し、乗り場でカゴに鞄を入れてシートに座る。


「あれ? もしかしてジェットコースター初めて?」

「ん? ああ、そういえばそうだな」


 1列2名のジェットコースターに三栖斗と並んで安全バーを掴んで座り、出発を待っている間訊いてみると、そもそも遊園地が初めてだと言う。後ろの列に座る怜音達から「えええーっ!?」と驚きの声があがった。


「……大丈夫かな」

「何がだ」

「どういう乗り物かわかってる?」

「まあ、知識としては」


 出発を告げるベルが鳴り、クルーが笑顔で手を振り動き出したコースターを見送る。

 あまりの事にこいつ、空中で霧になって消えちゃったりしないだろうかなんてシュールな不安を抱いた私を乗せて、コースターはカチャカチャとレールを上っていった。