「いや、まあぶっちゃけ。ちょっと前から三栖斗の勝ち確感すごかったけどついに勝負ついたんだねオメデトー」


 口で「ぱちぱちぱち~」と言いながら拍手をする銀河と、私はなぜか昼休みに2人で中庭に来ていた。

 お弁当はいつも通り怜音達と食べて、その後雑談をしていた所を銀河に声をかけられたのだ。三栖斗はというと、彼は彼で他のクラスメイトとお弁当を食べてその後はどこか教室の外へ出て行っていた。


「なんていうか……手のひらの上で転がされてた感じがして悔しいんだけど」

「ま、今日はね。好きな人を見る独特の眼差しって言えばいいの? わっかりやすかったもん。でもわかってると思うけど、彼は彼なりに今日まで全力だったよ」


 なにせ、俺たちにとって2年っていうのはとんでもなく短い。と銀河は言う。


「俺に恋だの愛だのはわからないけどさ。一生心を支配する恋愛感情って、それが叶わないのは怖くない? 俺で言うと、遊びたいのに遊びを禁止されたままずーっと過ごしていかなくちゃいけないとか無理だし絶対いつか狂う。だから個人的には――三栖斗の恋が叶ってホッとしてるかな」


 結局内心は三栖斗の味方だったんじゃない。


「前にも言ったけど、アイツ本当はあんな優しくないんだよ。自分の事しか考えてなくて、人並みに優しいフリだけはしてたし人付き合いもするけど……自分の利益になるヤツ以外は誰がどうなろうと知ったこっちゃなかった。そういうバケモノも少なくないけど、俺は今の方が好きなんだよね。隙があって」

「隙って」

「いやァ別に危害を加える気はないから。いい隙だと思うよ。とっつきやすいって事」


 ふうん……私が知らないアイツか……。私が最初に出会った頃はそうだったんだよね。

 午後の授業の予鈴が鳴り、周りの生徒が慌てて弁当箱を片付け始める。私たちも教室に戻らないと。と校舎に入り、階段を上がろうとした所でばったりと弘則に会った。


「雛ちゃんだ。午後の授業もがんばってね」

「うん、弘則も。――あのさ」


 教室に戻ろうとした弘則が立ち止まって振り返る。


「今日、部活の前にちょっと話せるかな」

「部活前だね。いいよ」


 真剣な私の顔に、弘則は全く疑問符を感じさせない落ち着いた表情で返事をする。それは心当たりがないけど適当に返事をしたというよりは、大切な話だと――その内容もわかった上で頷いているように見えた。