当番を代わって1時間程して、銀河先輩と本日2度目の当番にあたる継野先輩がやって来た。

 銀河先輩は私と三栖斗の顔を見るなり盛大に吹き出す。……理由は想像がつく。5組の映画だ。


「彼女、俺と合流してからこんななんだよ。何回も思い出し笑いするしさ。俺も観に行けばよかった」

「いやー、いろんな意味で面白かった! なんなら私一人で回すからツグさんも観て来なよ! 今までメタ推理で事件を解決していた探偵がね、助手からメタ推理を禁止されて――……」


 そう説明しながら先輩はいつのまにか番号札を持っていて、指でマルを作って私に見せた。「あとはやっとく」というようにウインクまでつけて。


「ありがとうございます。じゃあ……」

「はいはーい」


 三栖斗と一緒に出る必要もないから、一人で教室を出る。ステージ系の出し物も終わり、生徒以外の人が大分減ったように思う。

 残りの時間をどう回ろう……とぼんやり思っていると「雛ちゃん」と弘則の声がした。

 声のした方を見ると、弘則と羽野川くんが食べ物を手に壁際で休憩しているところだった。


「お疲れさま」

「弘則、羽野川くん。お疲れ様」

「タイムセールはじまっててさ。食材残るとアレだからって量も多いんだよ。食う?」

「食べる」


 ほいっ、と差し出されたたこ焼きの皿。そこから1個だけもらって、少し冷めかけのそれを口に入れた。


「橘、今からどうすんの?」

「んー、特に決めてないけど羽野川くんのクラスの迷路もまだ行ってないし行ってみようかなあ」

「おう。それならお前も行けば?」

「え? 俺ですか? うーん、でも」


 そう言う弘則の背中をぐいぐいと押し、羽野川くんは私の隣に弘則を立たせる。


「いいから行ってこい」

「うわわ」


 羽野川くんは気をきかせてくれたんだろう。親指を立てて見送ってくれていた。

 仕方ないね、と目だけで弘則と会話し、その場を離れる。


「うーん、文化祭の打ち上げが終わったら言ってもいいかなあ」


 弘則が苦笑いした。


「……そうだね」

「今からどうする? 俺別のとこ行こうか」


 弘則が気をつかって私に問いかける。私は首を緩やかに横に振って答えた。


「私ね、例の……私の記憶の事で弘則に話しておきたくて」

「うん、一人で抱えこなまいでって言ったでしょ? もちろん聞くよ」

「ありがとう」


 私は、廊下を歩きながら縁切りさんから聞いた話を弘則に話した。