月曜、部活に行くと1年生以外が揃っていた。

 案の定、ヒートアップしすぎたと判断した銀河先輩が止めに入るまで、たっぷり質問攻めにあった。


「みんなも意識せず今まで通り部活しましょ。雑念に囚われてつまらないセッションしないでよね」

「はい……」

「わ、わかったよ」


 コンコン、とノック音がして部室のドアが開かれる。


「お疲れ様です」


 小城さんと弘則だった。

 違うクラスだけど途中で会って、小城さんが継野先輩たちと同じように弘則に色々と訊いてたらしい。


「1年でも話題持ち切りなんですよ。動物のモノマネなんでもしちゃう2年5組の先輩の話と、高村くんたちの三角関係宣言」

「雛ちゃんも佐古先輩もすみません……なんていうか思ってたよりすごい騒がれちゃってて」


 実際、今日1日2年5組には学年を問わず“三角関係宣言をした2年の男子生徒の顔を見てみたい”という生徒が何人もやって来た。そしてそれは弘則のクラスでも同様だったらしい。


「まあお前らイケメンだし仕方ねぇよな」


 羽野川くんがダイスを指先ではじいて転がしながら言うと、継野先輩と小城さんがウンウンと頷いた。「そんなんじゃないです」と弘則が否定するが「うるせー! イケメンはそう言うんだ」と羽野川くんが机に突っ伏して嘆く。

 パンパン、と銀河先輩が手を叩いて「はいはい、そろそろ始めるよ」と言うと、ケロッとした顔で起き上がった。

 弘則を見ると顔が赤い。イケメンって言われて照れてるのかな? と思ったけど、なんだか違うことに気づいた。


「弘則?」

「ん? 何?」


 いつも通りの顔で返事が返ってくる。でもなんとも言えない違和感。

 ぴた、と額に手をあてると少し熱かった。


「ちょっと熱ある?」

「え、そう?」


 弘則が自分の手を額にあてる。「わからない」と言うので今度は羽野川くんが同じように弘則と自分の額の温度を手で比べる。


「あるっぽいな。保健室で測って来てもいいけど、今日は帰ったら?」


 他の部員からも「帰って休め」と言われ、渋々弘則が頷く。

 今日から弘則が楽しみにしていたTRPGをやる予定だった事もあり、本当に残念そうだ。


「弘則、一人で大丈夫?」

「いいよ、大丈夫。……じゃあ、すみません。お先に失礼します」

「お大事にー」

「気を付けてね」


 カチャン……と寂しそうな音を立てて扉が閉まる。

 本当に大丈夫かな……。後で、メッセージを送ってみよう。