電車で移動し降りた時、11時を過ぎた頃だったので、駅のすぐ傍にあったファミレスでご飯を食べる事にした。

 ジュワァァと音をたて、ハンバーグソースが鉄板の上で跳ねている。一緒に運ばれてきたライスも机の上に並び、店員さんが「ごゆっくりどうぞ」と言って立ち去った。


「よし食べよう。いただきます」

「いただきます」


 お肉とソースが熱された、よだれが出そうなこの匂い。いそいそとナイフで一口大にお肉を切り、ペレットに軽く押し付けてから「ふう、ふう」と冷まして口に入れる。


「ん~~ッッ!! 一日の活力~~ッ」

「ぶっ……! あはは、なにそれ!」


 弘則もシーフードドリアを口に運ぶ。私の方がボリュームのあるものを食べてる気がするけど、私は朝昼2食分なので多分セーフ。

 食事をしながら、それぞれの行きたい店や探したいものを言い合って、ざっくりと今日の予定を組んでいった。


 ああ、すっごく久しぶりに日常を満喫してるって感じがする。







 1軒目のホビーショップで、これから同好会で遊ぶことになりそうなゲームを少し教えてもらいながら色々見て回った。

 そこで、少人数で数字の書かれたカードを使って遊ぶゲームの小さな箱を握ったまま、弘則はそれを買うかどうかをものすごく迷っていたけど、悩んだ末にレジへ持っていったのだった。


 その次に入ったのは、すぐ傍の雑貨店。

 学校で使うための靴下を買い足したかった。ワンポイントで刺しゅうの入った紺のハイソックスを2足。

 選ぶのに迷っている間、隣で奇抜なデザインのスニーカーソックスばかり勧めてきては私にツッコまれて笑う弘則。

 そうして2足選ぶには時間をかけちゃったなぁなんて思って店を出ると、今にも降り出しそうな独特な雨の気配と空の色だった。


「あれ、私天気予報全然見てなかった。今日降るんだっけ?」

「曇り時々雨の、降水確率30%だったかな。一応折りたたみ傘持ってきたもんねー」

「弘則はしっかりしてるなあ」


 降らなければいいんだけど、と空を見上げて呟いた。弘則が少し時間をおいて「そうだね」と答える。

 雨が降り出さないうちにと、私たちは屋根のあるアーケード街へ向かって歩き出した。