「あっ、みんなおっはよー」

「おはよう怜音」


 なんの話してんの? とすぐ傍の席に座る怜音に、銀河が「んー、部活の話」と誤魔化す。


「そっか同じ部活だもんね。アナログゲーム部はみんな仲いいよね。土日も一緒に遊びに行ったりしてるの?」

「まあたまにはね」


 ぽつぽつとクラスメイト達が教室に増え始める。自分が今借りている席の主がまだ登校していないことを確認して、怜音がもう一歩踏み込んだ。


「ねえ、今度この4人で遊ばない?」

「ん? 俺はいいよ?」


 そう言いながらスッと銀河の目が細くなる。怜音がもしかすると自分に好意を持っているかもしれないと勘づいて、警戒するような目だった。


「……」


 本来、一緒になるはずじゃなかったもの。そもそも、愛という感情を持ちたがらないバケモノ。

 三栖斗と私の出会いは特別だったんだな、と思う。


「雛芽~、どこ行こうか~?」

「え? うーんとねぇ」


 銀河は、徹底している。恋愛感情は持たないと。

 わかりやすく浮かれている可愛い親友がいつか落ち込む日に少し胸を痛めながら、朝のだらだらとした休み時間を過ごした。







 放課後ーー……

 部室に向かうと鍵は開いているのに誰もいなくて、あれ? と疑問に思いながらいつもの椅子に腰かけた。

 私が一番乗りなんて珍しい事もあるもんだなぁとしんとした部室の中を眺め、ひとつ息を吐く。

 そうしていると、三栖斗が2番手で部室に入ってきた。


「銀河はどうしたんだ?」

「さあ? 鍵だけ開いてたからどこかへ行ってるのかも」

「そうか」


 三栖斗もいつも通り指定席に座って、荷物を置いた。


「……色々、終わったね」

「まあそうだな。けれど終わったというよりは、始まったんだが」

「う、うーん。それもそっか」


 少しむず痒いような気恥ずかしさがある。


「力になってくれた皆を落胆させるような真似もできないしな。学生のうちは勉強にもしっかり身を入れないといけない」

「うん。お父さん達と約束したしね」


 2人の世界は、2人だけによって成り立っているわけじゃない。それを忘れないようにしないと。