相田さんは流れるようにコーヒーを淹れ、軽い朝食を作ってくれた

「今日は忙しいの?」

深煎りのコーヒーの香りと共にする会話はまるでいつも通りの日常とすら錯覚してしまうほど心地がよい

「今日はレッスン終わりが5時で、その後は予定入ってないんですけど…」

唯と合わせる曲練習しなきゃな…と思い返す
勿論自分の練習をすることも忘れてはいない


「…暇では無さそうだね。
そりゃ、音大生は忙しいか」

そうなのだ。
普段から時間は足りないと感じるほどやる事があって、更に旅費の為に始めたバイトも馬鹿にならない

授業がなくても練習に何時間も費やす音大生の恋愛が上手くいかない事が多いのは自然の理なのだ