「じゃあ今日はここまで。
来週は第3楽章までやるから、練習しといてね」
「はい、ありがとうございました」
個人レッスンを終え、練習室から出ると唯が待っていた。
「彩音、ちゃんと書いててくれた?」
第一声がそれなのか。お疲れ様くらい言ってくれてもいいんだよ
「あの後書いたよ。面接って何時からなの?」
「流石は私の彩音、物分りがよろしくて。
面接は5時からだから、急ぐよ」
言われるがまま唯に着いていき、たどり着いたのは繁華街。
まだ夕方にも関わらず喧騒感に溢れている。
「ここだよ。採用担当の人、もう待ってるみたい」
「ここ…って、え?キャバクラ…だよね?」
「正解〜。1番手っ取り早く稼げそうだし、いいかなって」
悪びれもせず言ってのける唯に流されてしまうのは私の悪い癖
「すみません、待たせてしまって。」
「お、来たね。浅倉さんと岬さんだよね。」
開店前のお店に入るとスタッフルームへ案内された。
チラリと見た店内はイメージ通り煌びやかだったが、着飾った女の子も酔っ払った客もいない広いフロアは少し不思議な感じだった。