「そう。俺のピアノの師匠なんだ。それで、呼ばれてるんだけど…」

ペア招待券、なんだよね…と少し言いづらそうに肩をすくめる松村君

「一緒に行ってくれないかな…?
もちろん無理にとは言わないから。」

「…私でいいの?」

大物ピアニストを生で拝めるなんて、音楽家の端くれなら誰でも泣いて喜ぶだろう

「行ってくれるの?」

ほんとに助かる、とばかりにぱっと顔を綻ばせる松村君。
子犬がしっぽを振っている様子が目に浮かんでしまった。



日曜、待ち合わせの場所につくと、すでに松村君は先に来て待っていた。

「ごめんなさい、待たせちゃって。」

「いや、勝手に早く来ただけだから気にしないで。
こっちこそ、無理言って付き合わせて、ごめんね?」

パーティー用のタキシードをピシッと着こなす彼はとても同い年には見えない。

きっといろんなパーティーと行き慣れてるんだろうなあ。