「でさ、ドイツは外せないと思うんだよね。」
音楽、美術ともに日本を誇る名門校、帝都芸術大学の食堂でオムライスを頬張りながら話すのは親友の浅倉唯。
ちなみに私も同じものを食べている。
「そうだねぇ、あとはポーランドとかオーストリアも行きたいね」
夏休みに計画しているヨーロッパ旅行でどこを巡るかという大事な作戦会議の最中だ。
「いいね!あっち行ったら、本場のスイーツ食べて、買い物して、そんで本場のオペラが観れる…」
期待に胸を膨らませる唯につられて私もつい顔が緩んでしまう
「ところで唯。旅費どうするの?」
ヨーロッパ旅行を計画するにあたって最大の関所である。
唯は、待ってましたとばかりにニヤりと笑って1枚の紙を手渡してきた。
「…履歴書?バイト先の宛でもあるの?」
「ふっふっふ。申し込んでおいたから、それ書いて放課後一緒に面接行くよ」
私の返事を聞く前に「次授業あるから」と食べ終わった食器の載ったトレーを持ってスタスタと去ってしまった。
こう見えても彼女はヴァイオリン科では1位2位を争う実力者だ。
比べてピアノ科の私はトップとは程遠い成績なのが痛いところ。