なるべく見つからないように隅へ隅へと移動する。
バクバクと心臓の動きが早い。
どうしよう…。
近付いてくるよ……。
怖くてギュッと目を閉じた。
「悪い!遅くなった」
そこに現れたのは先生じゃなくて八神くんだった。
「や、がみ…くん…?」
私は急いで八神くんのそばに駆け寄り本物か確認するように手を握った。
「八神くん。八神くんだ。本物だ…!」
「当たり前だろ」
優しく微笑む八神くんに、私は握っている手に力を入れた。
「私、八神くんの事信じてるよ!そんな事する人じゃないって」
「ん?あぁ全部聞いたのか」
少し苦笑いをした八神くんは再び口を開いた。
「いいんだ。あんなの慣れてるから」
「そんな…」
「俺は莉子がそばにいればそれだけで充分だから」