「えー、今月末にある合唱コンクール!目指すは優勝だっ!!」
「「おぉぉーっ!!」」
新米斎藤が張り切る明徳学園高校一年二組のクラスから大きな返事が廊下まで響き渡った。
「ふがっ……スヤスヤ…」
まだ少し涼しい午前中に窓から散々と降り注ぐ陽射しがなんとも心地よい睡魔を未茉にもたらしてくれる。
「さぁーてと、指揮者はこの寝坊助のうちどちらにな・る・か・なぁ?!」
弾んだ声で新米斎藤が教科書を丸めて片手に叩きながら、イビキをかいて眠る未茉と翔真の前に仁王立ちになる。
隣で笑いを堪えるクラスメイトの視線が注がれているとも知らずに
ーーーバッコンッ!!!!
「いったぁぁぁーーいっ!!!」
担任の熱の隠った教科書が二人の頭に思いっきり命中し、未茉は思わず飛び上がって悲鳴をあげると、
「「あっはっはっはっ!!」」
クラス中の笑いの的になっていた。
「なに、なに?なんなのぉ?」
意味が分からず涙目で頭を押さえてると、担任はにんまり顔をし未茉の両肩に手を置き、
「一年二組、指揮者はお前だ白石!!」
「「あっはっはっはっ!!」」
クラス中に拍手喝采を送られながら笑われ、隣の席の結城には「ざまぁーみろ、白石!」と言われ、
「ふぁぁあっ。」と大きなあくびと共に起きた翔真には、
「俺じゃないの?やったぁ~」と言いながらまた眠い目をこすって眠りについた。