「おーい!!どこ行くんだよっ!」

未茉に自分の上着を羽織らせ翔真は彼女の手を引いたまま、会場を出て行き先も告げずに夕暮れの街をずんずん進んで歩いてく。

「おいって!!!」
繋いだ手を揺すっても反応なく、指を絡めるような手の繋ぎ方をしてきた。

「おい!!待ってって翔真」
「…だめ、帰さない。」
「でも」
「……」


「参ったな…」と未茉が困ったように呟くと翔真は急ぐ足を止め振り向いた。

「あたし今日お金小銭しか持ってきてないんだよ……。午前のランニングからこの夕方に至るし、翔真には何も奢ってあげられないし、たくさん応援したから自分も腹ペコなんだよぉぉ~~~!!それにもうお腹が空きすぎて歩けなぁぁああいっ!!!」

道端で大声で泣きしゃがみこむと、

「あはははははっ」

そんな彼女を見て翔真はお腹を抱えて笑いだし、

「うん。うん。」
一緒にしゃがんでその泣きべそ顔を覗きこみながら未茉の髪をあやすようにくしゃくしゃに撫でる。

「なんか食べよ。」
「小銭でぇ??」
「……いや、財布ありますよ俺。」

「やったぁぁぁあ!!!」
その言葉に未茉はガッツポーズして飛び上がるが、「あれ?なんか複雑」と翔真は呟いた。