(禅、嬉しそうだな…)
そんな二人をベンチに座り休みながら見守る弟・和希。
(禅の奴、すっげーモテんのに入学して早々に姉ちゃんに惚れてたもんな。最近高校行ったから会えなくて元気なさげだったし。)
ここは空気を読んで俺が空気になってやろうとする、姉とは違い勘の鋭い弟。



「あ、先輩、自分等これから試合です。」

「えっ!?」
突然我に返った禅が時計を見てヤバイと、荷物をまとめ始める。
「やべ!!寝てた」
いつの間にかベンチで寝てた和希も起き上がる。

「練習試合、すぐそこの大成中と。」
「大成中と!?」

午後から練習だったが、大成中との試合を見てみたくなった未茉。

大成中は有名なスポーツ校で東京でも1.2を争う程のバスケの強豪中で、もちろん同じ敷地内にある高校もインターハイ常連の東京屈指の強豪校でもある。

「先輩も大成高から推薦来てたんですよね。」
「大成は遠いし、なんっつてもほらよぉ・・・」
未茉は頭をかきながら苦笑いをすると、
「言わなくてもいいっすよ。察するんで。」

「…それによー」
「…」
「あたしは別につえーとこでバスケすることにこだわりねぇんだよ。むしろそのつえー奴ら倒したいね。」

ニッと勝ち気な笑みの彼女のそういう所に禅は、昔から恋い焦がれて止まなかった。