「白石!残るのはいいけど、ちゃんと掃除して帰ってよ。」
二年の女子バス部員達の冷たく言い放つ声が誰もいない体育館に響くと、
「はぁーい!!」
返事をする未茉の声も響いた。

「よしっ!!やるか!!」
新人一年にバスケを教えてる時間の方が長く、部活中にゲームに参加する時間がわずかの為、大好きなバスケを思う存分堪能できる居残り練習は大好きだった。
「あ、キタローは業務終わったら帰っていいからね!!」
ボールを用意してくれるキタローに未茉は気遣うも、首を振る。

「白石のバスケ見るの好きだから」
「ほんと!?嬉しい!サンキュー!!」
にっこり微笑むその姿に顔を赤らめるも、熱心に取り組む未茉の姿勢に、キタローはボールを投げ拾い練習を見守る。

「白石さん。」

「?」
キタローと未茉以外いないはずの体育館で男の声がして振り返ると、


「えっと…」

そこに立っていたのは男子バスケ部の男子だったが、
(名前が出てこねぇ・・・確か一年?)
考えてるのがバレたのか、

「あ、練習中にごめんね。俺、三組で男バスの佐々木っていうんだけど……分かるかな?」
「佐々木な!分かるぜ(今覚えた)!!」
「うん」
ホッと嬉しそうな顔して次の言葉を探すように、鼻の当たりに手をやったり、髪に手をやったりと落ち着かない様子で、次第に顔がみるみる赤くなっている。