「うっわ……!!何この人混み!!!」

駅に到着するとラッシュよりも酷い人波が駅のホームをごった返していて、一気に乗り込む客達に揉まれながらやっとの思いで電車を降りるが、

ホームでは乗り切れなかった人達に駅員が拡声器で『押さないでくださぁーい!!』と誘導をしている。


「おんぶしてあげようか?」

頭一個飛び出て人混みの息苦しさのない翔真は、いつものようにおっとりとした優しい口調で未茉に言うも、

「こういう時は便利だな。その背の高さ。」

「いやいや・・バスケでもかなり便利だと思うよ。」
190cm達の三上は涼しい顔していつものように冷静なツッコミを入れた。

だがいつものやり取りが今日はテンポよく返せなかった。



「あー。花火大会なんだ今日……」

ホームに貼られたポスターの日付を見て気づくと今日は東京の花火大会であった。

駅へ急ごうと流れる人混みに逆らって五人は大きなバッグを抱えながら高校へ向かう。

ワイワイ……ガヤガヤ……
浴衣を着た女子達の集団が胸を弾ませて嬉しそうに駅への道のりを歩いていく。

その反対の方角へと少し重い足取りで五人で歩いてく。
ふわっと湿った風が吹く方向を見ると、大きな夕暮れ滲み、その佇まいに呑み込まれていきそうで足が止まった。

「急がなきゃ!もう始まるよー!」「ねぇねぇこの浴衣さぁー!」
ーードンッとすれ違う女の子達の肩にぶつかると未茉の足は止まった。