「電車おっせ。」


遠くから踏み切りが鳴る音が聞こえて来る。

夕暮れ沈む駅のホームでバッグを椅子にして肘をついて目の前の町並みを眺めながら座って待っていた。

もう30分くらい経った。

BIG3とキタローといつもの五人が揃えば、必ずと言ってもいい確率で結城と未茉が言い合いを始めるものだったが、

今日はみんな無口だった。

結城は一人まだ啜り泣いていて、翔真はそんなみんなの様子に足並み揃えるように口を閉ざし見守っていた。

「…キタロー、インターハイ連れてってやれなくてごめんな。」

部員みんなのたくさんの準備を整えて荷物を抱えてやってきてくれたキタローに未茉はそう謝った。
「充分だ。ありがとう。白石」
首を横に振り、曇りひとつない笑みでキタローはそう返した。


試合が終わり閉会式が終わって、ホームにある鏡を見て自分の頭にぐるぐると巻かれた包帯姿に気づいた。

「……痛くない?」

包帯に手をやる未茉に翔真が気づき尋ねた。

「全然……」

痛くねーよっとか、もっと綺麗に巻いてくれよ、とかいつもみたいに文句言う元気も気力もなかった。


「……やっと来たな」

無言のみんなの代わりにキタローが珍しく口を開くと、大きく鳴り響いてくる踏み切りの音がやけに耳障りだ。

ガラガラの車内に乗り込むと……みんなバラバラに離れ座った。

一人になりたい微妙な距離感が必要だったのか分からないけど、翔真だけはいつもと変わらず未茉の目の前の吊革に手をかけて立ち側にいた。

見上げるとポッケからは新人王と東京ベスト5のメダルが二つ輝いていた。

そしてそれと全く同じメダルを二つ未茉も持っていた。