「だから……未茉と戦うのは嫌やったんよ……!!」
こうなることをずっと予期していて、決勝で当たらないでほしいとも思ってた静香は、泣くのをずっと我慢していた。
「あんたが泣く姿なんか……親友のあんたのこんな姿は見たくないんや……!!!!」
堰をきったように泣き出し抱きつく静香を見ていた親友二人の想いが交差する莉穂も遠くの客席から号泣した。
「……静香……」
その優しさが温かさとなって込み上げるように伝わってきてた未茉は静香に抱きつき、頷きながら涙を流した。
「インターハイ……頑張れ…!!頑張れ静香!」
きっとどっちかが言うはずだった台詞を未茉が口にしたのだった。
「……はぁはぁ……」
興奮と悲しみと整理のつかない感情に落ち着くことはない呼吸とそんな未茉の姿を見つめながら前原は、ポッケの中にいれてあったヘアゴムを手にして
震えを握りしめながら一筋の涙を流した。
「冬があるぜ。」
更衣室へと向かう未茉の頭に手を伸ばす健は、くしゃっくしゃと髪を強く撫でた。
冬のウィンターカップのことを言ってるのは、ぼんやりとする意識の中で分かったが、未茉は顔をあげられないでいると、
「次の勝負は、今この負けた瞬間から始まってるぜ。」
去年全国インターハイMVPの健は、下を向いてる暇はないと微笑んで去っていった。
明徳高校の初の挑戦であったインターハイ出場は、男女共に後一歩で逃してしまった。