「……ようやく気づいたか。鈍い奴だな。な?湊。」
コートの隅で誰にも気づかれないように試合後にこっそり見てた健はマイクと入れ違いに翔真の隣に行き勝ち誇ったように微笑んだ。
「ん?どうしたんだ?田島の奴……急に足を止めたりして…」
工藤は何度も確かめるように瞬きをするが、田島は足を止めて走り出そうとはしなかった。
そして彼女は確信をつくようにゆっくりと振り返った。
「あんた……まさかわざと……?」
未茉は田島の手から転がったボールを取り、
「サービスタイム、だろ?」
そっとゆっくり振り返ってニヒルな笑みを浮かべた。
「……!」静かなピリッとした見えぬ怒りに目が据わる彼女に不覚にも田島は、ぞくっと一瞬身の毛もよだつ程の狂気すら感じた。
そんな彼女を嘲笑うかのようにボールを勢いよく田島にパスをした。
「「なっ……!?」」
そのおかしな光景に皆、驚くもスコアボードを見上げた未茉は、
「サービスタイムはさっきの点数分だぜ。すなわちあと二点。早く今のうちに点差広げとけよ。盛り上がらねぇだろ。」
「ーー…」
一瞬驚き固まる田島だったが、ゆっくりと微笑した。
「面白いな。白石、こっからうちに勝つ自信あるつっーの?」
「おう。」
「ーー…!!」
きっぱりと強気に言い放ち田島を驚かせた未茉は、真っ直ぐと指を指し明言した。
「お前にひとつ教えてやるよ。」
「!」
「絶対に勝てる試合なんてないってことをな。」