ゴール下の静香や石井だけじゃなく、田島からのパスで大成の8番が3ポイントを連続で沈めていき、大成の怒濤の攻撃は止まることを知らず…
ーーバッシュ!!
そこからエースの田島が一人で連続で16点ゴールを決め続けた。
それは必死に最後までくらいつくようディフェンスをし続けた三年最後の試合になってしまうであろう鈴木と水上と新垣の目には悔し涙が滲む程だった。
「……はぁはぁ」
明徳は誰の目にも無惨な光景に写っていたことだろう。
疲労と汗と悲しみが余計に足を重くする間に次々に大成の選手がネットを揺らしてくのだから。
「未茉が何もできないなんて見たことない…」
思わず自分の口に手をやり莉穂の目には止まらぬ涙が頬に次々にこぼれ落ちては声にならぬ声で俯いた。
「…大成の勝ちだな。チームレベルが違いすぎる。」
和希までもがそう降参していた。
皆、分かっていたことなのに奇跡が起きるような気がしていた。
女子だけは大成に勝ってインターハイに行くという奇跡が。
明徳の男子部員が座るギャラリーはもう盛り上がる大成ギャラリーとは裏腹に静寂しきっていて、誰も口を開くことはなかった。
結城と三上の目には堪えきれない涙が浮かぶ程だった。
「もう拷問に近いな……これは」
48対20で前半を折り返し、ハーフタイムを迎えたスコアボードを見上げてマイクはその場を後にしようと静かに一歩を踏み出す。
「どこへ行くんです?」
こんな時でも顔色一つ変えない翔真に聞かれて不思議に思うもマイクは
「……お前は行かなくてもいいのか?白石のとこへ。」
聞いた時に愚かな質問をしてしまったかと思ったマイクを分かっていた。
「今は行く必要ないですよ。」
「だろうな。今行ったらかわいそすぎるだろう。終わったら慰めてやればいい。」
「……マイクさんはどこへ行くんですか?」
「外にいるよ。もう見たくない。」
まるで分かっていた現実かのようにきつく瞼を閉じる。
「諦めが早いですねマイクさん。」
そう微笑むも立ち去ってしまった。



