「クッ……!!」
激しいブレスをかけられながら鈴木がなんとかリングまで辿り着くも、

「打ってみろよ。どうせはいりやしないから。」
そんな顔をして石井が笑ってるように見えて、とっさにシュートを放つも

ーーガン!!
「!!」
リングに弾かれてこぼれ落ちたボールにすかさず水上が「もう一本!!」と声をかけて手を伸ばすも、

「!!」

「アホか。取れるわけないやろ。」
高くジャンプした静香が容易く水上の手よりも先にボールを奪い取り、田島に素早くパスを出す。

ーーバシッ!片手で受け取った田島は、戻ってきた未茉の前を横切り、

「もう手も足も出なくなった?」

フッと微笑んで通りすぎてシュートを確実に決めて歓声を浴びながら戻ってくる。

「負けたことのない天才さん。」

勝ち誇ったように笑う田島の姿を見ながら息を整える静香は今日までのこの舞台の日を振り返った。


……


(……田島さんは悪趣味やった。すぐにマウントとりたがるんや。評価の高い選手のプライドをズタズタに傷つけて潰して自分より下だということを確認しよる。

潰すことによって自分の強さに快感と絶頂を覚え、強さを積み重ねてるんや。

‘一緒にプレーをしてた親友が明徳におるんや!!物凄い天才やで!!うちは今まで未茉を越える天才は見たことあらへん!!’

入部早々のうちの一言やった。誰も相手にならん田島さんは天才という言葉に手が止まり、期待に胸を弾ませてうちを見た。

‘じゃ明徳に練習試合申し込むか。’
工藤監督にすぐに言いよって実現したんがこの前の練習試合やった。

あの日から田島さんはずっと今日まで考えはってたに違いないんや……この刺激あるオモチャをいかに相手が一番痛みを感じる方法でぶち壊してやるかをーー)


「それが…今日の大舞台なんや…」

眩しく照らされるライトの下でもうリバウンドすら取れなくなった明徳選手を見下ろすように呟いた。