「田島さん!やりすぎですやん。」
「大丈夫よ静香。あんたの親友思ってた程強くないわ。」
大成ベンチでは深く腰かけて‘肩凝った’と肩の骨を鳴らし平然とする田島に静香は詰め寄ったが、

「なぁーんか、実際マッチアップしてみるとたいしたことない気がする。天才?サラブレット?こんなもんなのかって感じ。」
退屈そうにため息つく田島を見て何も叱らない大成の工藤監督は、
「じゃこの点差は何分で返せる?」

「1分かかんないんじゃないですか?10分でダブルスコアにしますよ。」

「それは楽しみね。」
こんな大舞台でもこんな余裕でお遊びをしても怒らないのは、この悪い癖を持つプライド高い田島が自分の実力を極限まで出すやり方を知ってるからだ。



「「大成!!しっかり立て直せよ!!!」」「王者が負けてんじゃねーぞっ!!」
一部の野次に田島は面白そうに立ち上がり、

「はいはい。魅せてあげるから。楽しんで見てなよーー。雑魚共。」

インターバル終了10秒前、コートへ向かう田島は明らかに顔つきも雰囲気も別人だった。

「…行くな。ついに。」
勘づいたマイクがそう呟いた。

「挑発に乗っちゃダメだ…」
見守るつもりが翔真も思わず声に漏れてしまった。