「整列!!30秒前!」
笛がなるとギャラリーから上がる歓声や、大成の応援歌に大成女子に向けられた取材のカメラのフラッシュの嵐が向けられた。

「……よし行くよ。」
決勝戦なのだから明らかに今までとは違う空気なのは当然だが、緊張でガチガチになっているメンバーに鈴木キャプテンは背中を叩いていく中、未茉だけは緊張とは無縁だった。


「あれ、前原さんやっぱしてくんないんだ。ヘアバンド。」

「しないったでしょ。」
「ふーん。やっぱ意地っぱり」
「嫌いだって言ってるでしょ。あんたもバンドも。」
「あははは」
未茉が笑うと周りは緊張感のなさに驚くように振り返る。


「あれ…」
「ん?どうしました?」
大成にカメラを向けてるとその隣にいたプロバスケ雑誌の記者が大舞台でも一人あっけらかんと笑う未茉を見て首を傾げた。

「あの子…この前星河君と仲良くしてた子だ。確か白石清二の娘。」
「ええっ!?めちゃくちゃサラブレッドじゃないですか!!」
「写真撮らせて欲しかったのに。逃げられてさ。」
面白そうな展開にカメラマンは未茉にもレンズを向けた。


コートの向かい側にやって来る大成女子の高さと迫力に改めて圧倒される160センチ台の前原と水上はごくりっと音を立てて息を飲んだ。

((なんて高さ……!!))

練習試合の時は、180オーバーは石井と静香だけだった。今回は田島以外みんな178センチ以上のスタメンだ。しかも体格もちがければ肩幅も違っていた。

「……」
その中でも静香は黙ってゴールを見つめていた。
「静香、どうしたの緊張か?大人しいじゃん。」
いつもみたいに挑発してこない静香を覗き込んで未茉が言うも、
「……」
目を合わせようともしなかった。
「おいっ!!お前昨日から感じわりーぞ!!」
そう怒鳴るも、無視されてしまった。


「白石。」

「田島さん!」
試合開始のホイッスル直前になると、田島に呼ばれ、
「楽しみにしてるわ。」
「ああ!こっちだって。」
両者譲らぬ笑みを浮かべて握手を交わした。



『只今よりインターハイ東京女子バスケットボール予選決勝戦を行います!!』