「でもよ。モテんのは知ってるけどあたし翔真のことイケメンだなぁって今まで一度も思ったことないんだけど」

「「え・・・」」
(試合中なのに萎えること平気で言うなぁ・・・)
心がナイーブな翔真は一瞬固まるも、



「でもバスケしてる翔真は、カッコイイと思うぜ!」

「え…」
思いもよらない返しに顔を上げた。


「チームを勝たせるぞってマジな顔してさ。お前カッコイイじゃん。」

真っ直ぐで嘘のない告白を、

「あたしそういう翔真好きだな!」

にかっと歯を見せて笑うその無邪気な素直さに、自分の一部でも、たががそうほんの一部でも、
‘好き’なんて言われると衝動的に体は動いてしまう。


ーーーーガランッ……

持っていた水筒をいつの間にか離してて床に転がった。


「おっわ…翔真!!」
「ありがとう。嬉しくてたまんない。」

いきなり翔真がぎゅっと不意討ちに未茉の体を強く強く抱き寄せる。

視界が翔真の胸に覆われて何も見えない。汗まみれのユニフォームと早く熱い鼓動の音と頭の上のから聞こえる彼の荒い息遣いと、遠くでみんながざわめく声が聞こえるだけだった。

もちろん大成ベンチから、早乙女も見ていた。


「もっかい言って。」
「何を?」
「今の言葉。すげー嬉しかったからもう一度聞きたい。」

「だから……」

いつも急に抱きしめられたり抱きついてきたりするのに今日は違う違和感を感じた。

翔真の体が熱くて、体温が高くて、鼓動が早くて、抱き締められる腕が強くて、低い声が心にぐっと響くように入ってきて……

「だから翔真が……」

言いかけた時にーーーゴンッ!!!と物凄い音が振動で響くとパッと翔真の腕からほどかれ、

「生徒のくせに俺よりも幸せなリア充すんじゃねぇっ!!て言ったじゃねーかっ!!」

気づくと頭を押さえて眉毛を下げる翔真が、完全なる私情の入った新米斎藤に叩かれて引き離されてく。


「あははっ痛ったそー!!」

と思いつつも未茉は吹き出しながら笑って、

「今日の翔真はカッコよくて大好きだぜ!!」

……ざわっ……!!
口元に両手をあて大きな声で言うとみんながこっちを注目するもまるで気にも止めず、


「だから頑張れよ!何回でも言ってあげるから!!」


「じゃーあと、百回。」

そうアンコールされるも、二年の橘に頭を叩かれる翔真に未茉はまた笑った。

「おっし、後半気合い入れて行くぜ!!」
まるで見違えるような顔つきの単純な翔真に一同は呆れるも、
「「おっしゃっ!!行くぜぇ!!」」
部員達は翔真を中心に後半戦に向けて気持ちはひとつとなった。